Saturday, February 16, 2013

[とっとりざっくばらん]モンゴルの自然“新発見”

◆鳥取大獣医学科准教授 實方(さねかた)剛さん65(鳥取市)

【ざっくばらん用】鳥取大准教授 實方剛さん

大学で教べんをとる傍ら、獣医師として、モンゴルで人や家畜の伝染病の予防や治療のために尽力してきた實方准教授。3月末で退官するのを機に、モンゴルの人々の暮らしや自然の美しさなどを多くの人に知ってもらおうと、12年間にわたる活動を紹介する写真展「獣医師の診たモンゴル」が、鳥取市の同大学広報センターで開かれている。これまでの体験やモンゴルへの思いなどを聞いた。(松田卓也)

――モンゴルを度々訪れるようになったきっかけは?

国際協力機構(JICA)の活動に加わり、2001年に初めて訪問。治療の技術が十分でなく、専門医も多くない現地で、馬や牛、ヤギなどの伝染病の治療や予防などに取り組み、その後も大学の研究やボランティアなどで活動を続けてきました。毎年2、3回は訪れ、3週間~2か月間ほど滞在します。

――初めて訪れた時の印象は?

日本の約4倍の広さがあり、人口は250万。そのうち首都のウランバートルに120万人が住みます。国土の大部分が草原や砂漠。山岳地帯を車で4、5時間走り続けてようやく人に出会ったということもありました。野生の馬が雪原に足跡を残して歩く姿を見た時の感動は今も忘れません。

――現地では鳥取大で培った乗馬の技術が役立ったそうですね。

獣医学科に在学していた1968年、日本中央競馬会(JRA)に就職した先輩から「獣医学を専攻するなら、馬の生態を知ることができる馬術部があった方がいい」と勧められ、その後、馬を譲ってもらうなどして創部しました。モンゴルでは、遊牧民は必ず馬を使って移動します。競馬も盛んで、乗馬ができると信用されます。そのことで現地での人脈が広がり、伝染病の発生した地域で、馬の血液や便などの検体の採取をスムーズに行うことができました。

――何度も訪れたくなるモンゴルの魅力とは何でしょうか?

雄大で厳しい自然とそこで暮らす人々や動物の営みです。冬は氷点下40度、夏は30度まで大きく変化します。遊牧民の子どもたちは、3歳から馬に乗り、小学生で数百頭の馬の放牧を任されます。また、競馬大会では約30キロにも及ぶ長距離のものもあり、競走相手と激しくぶつかり合うなどします。乱暴に思える部分もあるかも知れませんが、彼らにとっては遊牧民として生きていくうえで当然のことで、困難にめげない強さとたくましさを育んでいる。そうした人々が食事などの際に見せるふとした表情はとても豊かです。

――写真展で見てもらいたい点は。

写真展は、撮りためてきた中から50枚を選びました。野生の馬の群れの中で雄のボス同士が争う場面など、乗馬ができたお陰で撮影できた写真もたくさんありました。普段は見られないモンゴルの自然や風景を楽しんでもらいたいですね。

◇メモ

横浜市出身。大学では馬術部の顧問を務める。これまでモンゴル以外にもネパールやガーナに獣医師として訪れた。モンゴル訪問時に、大相撲の横綱・白鵬の兄と親しくなり、白鵬のパスポート用写真を撮影したこともある。写真展は21日まで。平日午前9時~午後4時。問い合わせは鳥取大男女共同参画推進室(0857・31・5013)へ。

(2013年2月13日 読売新聞)

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