Monday, October 22, 2012

急拡大するモンゴル経済にビジネスチャンスあり!

私はこれまで国際開発協力会社の主任研究員として、途上国などの開発協力に関わる調査をしてきていますが、その一環で今春、モンゴルにおけるビジネスチャンスの調査に行ってきました。

日本の約4倍の国土に、人口はたったの280万人(大阪市と同規模)という、国連加盟国の中では世界で最も人口密度の低い国が今、世界から注目されつつあります。
世界ナンバーワンのGDP成長率

モンゴル国家統計委員会によると、2011年の国内総生産(GDP)成長率は17.3%と急成長。さらにシティバンクのリポート「Global Economics View 2011年2月」(PDF)によると、「2010~2015年のGDP成長率トップ10カ国」「2010~2030年のGDP成長率トップ10カ国」ともにモンゴルは第1位にランクされています。

Global Economics View 2011年2月拡大画像表示

Global Economics View 2011年2月拡大画像表示

2011年のモンゴルのGDPは約86億ドル。これは世界で133位ですが、2025年にはこの10倍まで成長するとの予測があります。また、その頃には1人当たりのGDPが2万ドルに達すると予想されています。

これは2011年の韓国やサウジアラビア、台湾など世界40位前後の国々に比肩し、国民の購買力急増が見込まれるなど、現在のモンゴルはまさに40~50年前の高度経済成長時代の日本に近いステージにあると言えます。

さらに国民の半数が25歳以下という非常に若い国で、企業や政府などの各ポストのキーマンも30~40代が中心です。そのような若手が「自分たちがこの国をつくっていく」という気概にあふれ、国全体が活気づいていることが肌身に感じられます。

日本の内向き志向と言われる若手ビジネスマンも一度モンゴルに行かれると刺激を受けるのではないでしょうか。実際日本人の若手事業家でたくましくビジネス展開している方々もいて、エネルギッシュに活躍しています。
なぜモンゴルなのか、6つの理由

モンゴル市内の様子(筆者撮影、以下同)

さて、改めてビジネスの観点でモンゴルの魅力について6点ほど挙げてみたいと思います。

(1)経済成長の高いポテンシャル

先述しましたが、モンゴルの経済成長率は世界でも屈指です。アジア開発銀行の最新の予想では、2012年が15%、2013年が17.5%の成長とあります。

モンゴル国家発展改革委員会によると、今後4年間でGDPが3倍、2桁成長が10年間は続くだろうと予想しています。

その主なエンジンは大鉱物資源鉱床の開発です。世界の3大銅・金鉱床の1つを有し、石炭は世界7位の埋蔵量を誇ります。

2013年にはオユントルゴイ銅・金鉱山(埋蔵量3000万トン、可採年数50年)からの輸出が開始され、さらには未開発石炭鉱山では世界屈指の規模のタバントルゴイ石炭鉱山(埋蔵量64億トン、可採年数200年超)の本格開発が始まります。

この2大鉱山のほかにも中規模の銅鉱山、石炭鉱山も開発に入り、一部では輸出が始まっています。さらにウラニウムやモリブデンなどのレアアースも豊富に埋蔵されているようです。

そして政府はこれらの鉱物資源開発で得られる収入を第1次~第3次産業の育成に投資する計画を立てており、長期的な視野で鉱物資源に依存しすぎない国づくりのもと、戦略的工業地区の開発も進めつつあります。

(2)モンゴルは親日国
モンゴルにおける対日世論調査(2004年)
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少々古いデータですが、2004年の外務省による「モンゴルにおける対日世論調査」では、「今後モンゴルが最も親しくすべき国はどこだと思いますか」という問いに対し、日本がナンバーワンに挙げられています。

この背景として、日本が国際社会における対モンゴル支援で常にイニシアティブを発揮してきたことが一因であると思われます。

1991年に先進国首脳として初めて日本の海部俊樹総理がモンゴルを訪問し、同年日本の提唱で第1回「モンゴル支援国会合」を東京で開催しました。

さらにODAを通じてこれまでにも様々な援助を実施してきました。金額ベースでは2010年までに無償資金協力が942億円、有償資金協力が758億円、技術協力実績331億円に上ります。

(3)日本企業による積極的な進出

また、これまでにも日本の商社や中小企業を中心にモンゴル進出がなされてきましたが、今年に入って大手の動きが活発のようです。

例えば、三井物産が石炭輸入事業に取り組みだしたり、ソフトバンクが風力発電事業に名乗りを上げ、双日では建設から運営まで一貫した発電事業に乗り出しています。

(4)潜在能力の高い人材層

モンゴル人の能力の高さも魅力の1つです。

●理数系が強い

社会主義時代の徹底した詰め込み教育が今でも残っており、物理や化学などは小学校高学年で日本の中学生並みのレベルを教えています。そのため論理力やプログラミング能力などにも長けており、日本のIT企業にはモンゴル人を意図的に雇用しているところもあります。
日本式教育を取り入れている学校

●技術習得に対する意欲が高い

自ら新しいものを学ぼうとする意欲が強く、技術の習得に対しても積極的です。

●語学能力が高い

記憶力がよく、物怖じしない性格のため、語学力が高いと言われています。実際、英語やロシア語以外に日本語も話せたりと、学生や社会人にはマルチ言語の習得者が結構います。

●就学率が高い

2010年度には、実に全国民の26.3%が教育機関で学んでいることになっています。GER(総就学率)は初等教育で98.6%、中等教育で94.7%、さらには義務化されていない保育園や幼稚園へも77.6%もの子供たちが通っているほどの高水準ですし、一方で6~14歳の中退率は0.8%と低水準です。

●日本への留学生数が増加

モンゴルから日本へ留学する学生の数は増えており、2010年5月1日時点で1282人が高等教育機関に在籍しています。出身国(地域)別では11位に位置するほどです(出典:在モンゴル日本国大使館ウェブサイト)。

それとともに「日・蒙の架け橋になりたい」というモンゴル人経営者やビジネスマンも増え、あらゆる面で日本企業への期待が高まっています。

●女性の社会進出が活発

また、モンゴルの中小企業庁に所属するアドバイザーによると、起業の相談に来るおよそ8割が女性とのことでした。今後女性の能力がますます発揮されるようになってくると、産業界もより活性化してくると思われます。

(5)魅力的な市場

●市場占有率の高さ

人口の40%が住んでいる首都ウランバートル市は都市のあらゆる機能が集積するコンパクトシティで、広範な活動をせずに市場占有率を高めることも可能です(実際、コカ・コーラやユニ・チャームなどは競合不在の中、高いシェアを誇っています)。

●高い利益率

急速な発展に商品やサービスの供給が追いついていないため、過当な価格競争のリスクが低い中で高い利益率の確保も期待できます。

●可処分所得が高い

ウランバートル市にあるルイ・ヴィトンの店舗

海外への出稼ぎや大家族世帯が多く、世帯の可処分所得が高いです。実際、高級化粧品や高級家電、高級ホテルなどの顧客の大半がモンゴル人です。

私が現地へ出張中にBBCでモンゴル特集が放映されていましたが、ウランバートル市のルイ・ヴィトンで、モンゴル人のお客が現金で買い物をしている様子にリポーターが驚いていました。

(6)近隣大国へのアプローチ

モンゴルは人口が280万人ほどの小さな市場ですが、モンゴルを起点として他国へのリーチも考えられると思います。

●ロシア市場

ロシア語を話せるモンゴル人も多く、適切なパートナーと組めばロシア市場への進出も見込まれます。

●中国人へのアプローチ

モンゴルに年間19万人ほど(2010年度)訪れると言われる中国人観光客向けのビジネスもあり得ます(日本への中国人観光客数は45万人ほど=2011年度)。

●EU市場へのアプローチ

7000品目以上を対象にEUへの輸出関税が免除される「GSP+(Generalized System of Preferences Plus)」が2006年から適用され、カシミヤ製品などの輸出促進につながっています。今後幅広い品目に活用されることが期待されています。

以上、モンゴルにおけるビジネス環境を見てきましたが、次回は業種別のビジネスチャンスについて言及したいと思います。

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