Saturday, January 5, 2013

【萬物相】脱北した子どもたち

映画『クロッシング』(2008年)は、結核になった妻のため薬を入手しようとして中朝国境の豆満江(中国名:図們江)を渡った父、北朝鮮に残された母、そして11歳の息子ジュニの物語だ。中国に行った父の消息は途絶え、病気の母が死んでジュニは孤児となる。中国の公安当局に追われ韓国に来た父は、ブローカーを通じ息子を韓国に連れて来ようと苦心する。ジュニは脱北に成功したものの、父に会うには8000キロ離れた中国・モンゴル国境まで行かなければならなかった。

ジュニは砂漠で迷った末、父との再会を目前に寒さと飢えで死ぬ。ジュニがかろうじて発した最後の言葉は「お父さん、お母さん」だった。この映画は脱北者ユ・サンジュンさんの実話を元に作られた。ユ・サンジュンさんの息子は2001年に父を追って脱北したが、モンゴルの国境地帯で力尽きて死んだ。ジュニのように脱北の過程で親を亡くしたり、3カ国をさまよう子どもは約2000人いるという。脱北した北朝鮮の女性と中国人男性の間に生まれた無国籍の子どもは2万人を超える。

中国をさまよう脱北した子どもたちは、保護されるどころか金もうけの道具にされるのが常だ。中国人の中には孤児同然の子どもを「だし」に脱北者支援団体に金を要求する人物もいる。女の子たちは性的暴行を受けることもある。北朝鮮に送還されるのではと恐れ、隠れて暮らしているため、最も基本的な教育・医療の恩恵も受けられない。北朝鮮から捨てられ、韓国からもそっぽを向かれている子どもたちは見知らぬ土地で「国際的な迷子」になり、今もボロボロの服を着たまま飢え、行き倒れている。

韓国に定住できるようになった子どもたちでも、韓国の同年代の子どもに比べ身長で8.8センチ、体重で14.3キロも小さい。5歳未満の北朝鮮の子どもたちの32%には身長発育不良、19%には低体重という成長障害が見られる。米国の慈善団体が平安北道鉄山郡の病院にいる新生児3人の体重を測ったところ1700-1900グラムしかなかった。韓国の新生児の平均体重3200-3400グラムの約半分だ。

米議会は脱北した子どもたちの保護・家族との再会・養子縁組を米政府が支援する「2012北朝鮮子ども福祉法案(North Korean Child Welfare Act of 2012)」を全会一致で可決した。これにより、米政府は脱北した子どもたちの実態と保護、養子縁組の戦略をレポートにまとめて議会に提出することを義務付けられる。韓国の国会がこの9年間で「北朝鮮人権法」を可決できていないのに対し、米国は04年の北朝鮮人権法に続き、脱北した子どものための法律まで作った。捨てられた子どもたちを長年、米国で養子縁組させてきた韓国は、わたしたちのもう一つの未来である脱北した子どもたちの世話まで米国に任せてしまうのだろうか。

鄭佑相(チョン・ウサン)論説委員
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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